2022.09.30
バイクが走行中、路面と接する唯一のパーツであり、とても重要なのに、地味な見た目のためか、意外と知らないことも多いのがタイヤ。構造のこと、サイズのこと、その役割によく言われる“接地感”まで……。タイヤに関して知っておきたいことを、広範囲にわたりまとめてみた!
タイヤの重要な役割とは?|タイヤサイズの読み方|溝の仕事は排水だけ?|扁平が変わると?|ラジアルとバイアスの違い|ラジアルタイヤがバイクの走り方を変えた|サーキットでは空気圧を下げるのはなぜ?|「接地感」って一体なんなんだ!?|溝があっていても製造年月日に注意|OEMタイヤって何が違うの?|タイヤを保管するときの注意点とは?|パンク修理すれば使い続けても大丈夫?|タイヤは前後セットで開発されている|実はタイヤもサスペンションの一部だ!|
タイヤに求められる4大基本要素は、下に挙げたとおり。おもにタイヤの内側に閉じ込められた空気の量と圧力で車両の重量を支え、ゴムの摩擦力などによってエンジンやブレーキの力を路面に伝える。そしてゴムの摩擦力と弾性力および構造の剛性によって、ライダーが行きたい方向に曲げたり直進を維持したりといった車体の動きを生みだし、タイヤ内部の空気の量と圧力やゴムおよび構造の弾性によって路面の凹凸により発生した衝撃を緩和する。仕事量はとても多い!
タイヤ幅は、断面で見たときにもっとも広い部分の直線幅。一般的なバイク用はトレッド幅と同じだが、小型のバイアスタイヤには例外もある。概略で示されるので、「180」なら絶対に180mmということではない。荷重指数は既定条件下でそのタイヤが速度記号で示された速度で許容できる最大負荷能力を示し、速度記号は荷重指数相当の重量を運べる最高速度を示す。「73なら365kg、(W)なら270km/h以上」というように、インデックスで数値が決められている。
タイヤの接地面(トレッド)に刻まれた溝には、まず排水の機能がある。また、溝にはスリップサインが設けられて、これで摩耗限界がわかる。しかしもうひとつ大きな役割があり、溝が設けられていることで、荷重がかかったときにトレッドが柔らかく動くようになる。これが、刻々と変化する路面状況に対応する大事な要素のひとつなのだ。タイヤが摩耗して溝が浅くなると、タイヤ表面の柔らかさが不足して追従性が低下し、減衰力不足でスリップダウンしやすくなるのだ。
タイヤサイズ表記の中にも組み込まれている扁平率とは、タイヤの幅に対する高さ(断面を見たときに一番低い場所から高い場所までの長さ)の比率を示したもの。つまり同じ190mm幅でも、55扁平よりは60扁平のほうがタイヤの断面が高くなる。扁平率が増えると、タイヤ内部のエアボリュームが増加して、サイドウォールは高くなり、これらの効果で、衝撃吸収性や路面追従性の向上、あるいは走行時の穏やかな空気圧変化などが望める。一方で、タイヤは重くなる。
基本的なタイヤの構造として、路面と接地するトレッド、側面のサイドウォール、ホイールに密着するビートがあり、ビートには太くて強力なワイヤー、サイドウォールやトレッドにはカーカスと呼ばれる繊維の層が内装されている。そしてカーカスの配列により、ラジアルとバイアスに分けられる。また、ラジアルタイヤやベルテッドバイアスタイヤの場合、トレッドを補強するベルトが、カーカスの上側に重ねてある。’80年代前半までバイク用タイヤはバイアスのみだった。
タイヤの重要な役割とは?|タイヤサイズの読み方|溝の仕事は排水だけ?|扁平が変わると?|ラジアルとバイアスの違い|ラジアルタイヤがバイクの走り方を変えた|サーキットでは空気圧を下げるのはなぜ?|「接地感」って一体なんなんだ!?|溝があっていても製造年月日に注意|OEMタイヤって何が違うの?|タイヤを保管するときの注意点とは?|パンク修理すれば使い続けても大丈夫?|タイヤは前後セットで開発されている|実はタイヤもサスペンションの一部だ!|
ラジアルタイヤの登場と進化により、タイヤは“潰して走る”のがスポーツライディングの定番となった。コーナー立ち上がりではスロットルを大きめに開け、しっかりトラクションをかけてタイヤを潰すように走ることで、バイアスタイヤでは不可能だった、高いグリップを得られるようになったのだ。これは、サイドウォールが柔らかいラジアルタイヤだからこそできるライディング。高出力化が続いてきたリッタークラスのパワーを、効率よく路面に伝える手段だ。
そもそも、車両メーカーの指定空気圧は、一般道路での段差やギャップ、乗り心地などさまざまな状況を想定しつつ設定されている。サーキットの場合、基本的に路面はきれいなので、ある程度の範囲まで空気圧を落としても問題ないが、公道では車両メーカーの指定値で走るのが鉄則だ。サーキットで空気圧を落とすメリットは、タイヤがたわみやすくなることで、状態がわかりやすくなる点。加えて、圧をかけたときに接地面積が増えるので、グリップアップにもつながる。
じつは人によって「接地感」を得る感覚は異なる。例えば、タイヤがグリップしているフィーリングを指す人もいれば、タイヤから伝わってくる情報をこう表現するライダー、あるいはタイヤのグリップする力そのものを表わす人も……。つまり、「グリップが低いんだから接地感はない」という人と、「グリップは低いけど接地感はある」という人が存在することになる。ちなみに某タイヤメーカーの性能試験評価では、あいまいさを理由にこの言葉の使用が禁止されている。
タイヤはゴム製品なので、目には見えなくても経年劣化している場合がある。しかしタイヤには、明確な使用期限はない。これは、使用環境や保管状況により劣化速度が大きく異なるため。ちなみに一般的には、太陽光に含まれる紫外線、湿気や高温、ガソリンを含む化学薬品の付着、オゾンを発生させる変圧器や電流を発生させる機器などの影響が、タイヤの劣化を早める原因とされる。いずれにせよ、使用開始から3 ~ 5年経過していたら、溝が残っていても交換するべきだ。
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新車に装着されているタイヤは、バイクメーカーが製造しているわけではなく、タイヤメーカーからOEM供給されている。一部の車種ではバイクメーカーのリクエストにより、タイヤメーカーが既存製品のコンパウンドや形状、構造をチューニングして、車両に最適化させることがある。この要請は、日本メーカーのほうが現在でも多い傾向のようだが、全車種にチューニングタイヤが使われているわけではなく、リプレイス品と同性能のタイヤが装着されている場合も多い。
前述した「溝がしっかり残っていても……」でも説明したように、タイヤは紫外線や湿気や高温に弱く、劣化を早める要因になる。このため、例えばミシュランのカタログでは、タイヤを保管するときは「乾燥した状態を保ち、紫外線を避け、適切な気温で……」というような注意事項が書かれている。ちなみに、単体で長期保管するときは、ビートが閉じないよう垂直に起き、月に一度は少し回転させて変形を防ぐのがいいようだ。
トレッドに異物が刺さってパンクした場合、異物や修理工具が内部に達したということは、カーカスが一部切断されたことになる。またチューブレスの場合は異物が刺さってから気づくまでに時間がかかった結果、ゴムと繊維の間に水分が入って一部が剥離してしまうこともある。この状態で高速走行をした場合、不具合が起きる可能性や本来の性能を発揮できない可能性を完全に否定はできない。パンク修理は応急処置と考えるべきだ。
タイヤメーカーは、開発時に必ず走行テストを実施して、操縦安定性や直進安定性、ハンドリングなどを実走テストしてから製品をリリースしている。製品カタログでは、フロントとリアの構造や特徴などについて別々に記載されているが、当然ながら実走テストでは別々に試しているわけではなく、前後のバランスを考えながら、多くの車種に最適となるようチューニングされている。前後に異なる銘柄のタイヤを履いたのでは、本来のポテンシャルを発揮できないのだ。
すでに解説したように、タイヤには4大基本機能があり、そのうちひとつが「路面からの衝撃吸収」。つまり路面の凸凹などを通過することで発生した衝撃を、前後サスペンションだけでなくタイヤも一緒になって緩和している。タイヤの衝撃吸収には、ゴムや内部構造の弾性に加え、タイヤに閉じ込められた空気の量と圧力が働いている。だから、空気圧が高すぎても低くてもハンドリングが悪くなる。常に適正な空気圧に調整しておくことが、ライテク向上のコツにもなるのだ。
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